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Student Interviews

学年はインタビュー当時

化学のレンズを通して観る分子の世界に魅了されて
小泉 愛さん

理学部化学科 博士課程後期 1年の小泉 愛さんに大学での研究生活について伺いました。
インタビュー:小泉 愛
1.東北大学大学院理学研究科化学専攻で博士課程への進学を決めた理由はなんですか?

私は高校生の頃に周囲のあらゆる物が原子・分子から成ることを学んでから、周囲の物を原子・分子レベルでどうなっているかを妄想することが好きでした。しかしそれはただの妄想に過ぎず、いつももどかしく思っていました。例えば水は水分子が正四面体に配置した結晶構造をとることが知られていますが、水の表面ではどのような構造になるのだろうと考えた時、水分子同士の水素結合が多くなるような構造になるだろうというところで思考が止まってしまいました。そして水といった生活の中で最も一般的な液体であっても、その微視的な情報はほとんどわからないことに驚愕しました。その頃氷の融解メカニズムを分子一つ一つの挙動から解明したという研究を知り、絶対にこの研究手法の分子動力学シミュレーションを用いて研究をしたいと思いました。また私たちが現実に目にして触って観測できるのは「物の表面」ですが、学問的に明らかになっていることは等方的な系の性質ばかりで、大学に入ってからも「現実に私が観測している物」と「学問」の間にギャップを感じていました。だから分子動力学シミュレーションを使っている研究室を全国から探し、水の表面・界面について研究している東北大学の計算分子科学研究室を修士課程の進学先に選びました。他大学へ院進学して修士課程の二年だけでは十分研究できないだろうと思い、最初から博士課程に進学するつもりでした。

2.実際に進学してみてどうでしたか?

修士課程では授業数が多いことや、研究に必要なプログラミングになかなか慣れなかったことで、思うように研究を進めることができず挫折の連続でした。慣れない土地で初めての一人暮らしということもありあっという間に二年間が過ぎてしまったように思います。博士課程では東北大学が主催するサマースクールで海外から学生を招聘する仕事に携わるなど新たな経験もありましたが修士課程と異なり授業が無いことで以前よりも研究に集中して取り組めています。学会発表の機会も増えてきましたが、研究は学会や論文で発表することで初めて化学という学問に貢献できるので、今後も積極的に発表していけたらと思います。また博士課程では、化学科の学生は現在何らかの形で全員経済的な支援を受けることができています。私は、卓越研究員事業から支援を受けることができ、精神的な負担も軽くなったと感じます。

3.現在取り組んでいる研究テーマや研究室生活について教えて下さい。

小泉愛(計算分子)私は親水性イオンの水相から油相への輸送を促進する相間移動触媒の研究をしています。特に親水性イオンを油相へ抽出して、油相で反応を起こす相間移動触媒反応は工業化学分野や有機合成分野で有用ですが、水/油界面をまたいだ系での反応解析はこれまでに例がなく反応機構は未解明です。この反応機構解明への困難はイオンが界面からどの程度離れているか、水相から引き連れる水和数がいくつなのか、また触媒とのイオン対形成といった系の詳細が反応に影響することです。そういった微視的な系の詳細を一つ一つ明らかにすることで界面をまたぐ複雑な系の反応機構も解明できると考え研究を行っています。研究室では様々な個性の人がいて飽きの無い研究室生活を送っています。研究についていつでも相談に乗っていただける教授と、研究以外で困った時には人生の先輩として私に助言をくださる仲良しの秘書さんのおかげで幸せな研究生活を送ることができています。

4.将来の目標を教えて下さい。

「物が何かもっとわかりたい」という思いからこれまでの進路を決めてきました。これからも研究を続けられる道がいいと思っています。浪人を決めた時、他には浪人する人や国公立大学に進学する人がいない高校だったからか進路相談の先生から「お前には向いてない」と言われてしまいました。私は頑固なので浪人し、本当に苦しかったけれど今は浪人してよかったと思っています。自分が考え抜いて決定した進路で最大限努力できた時にはどんな酷い失敗をしても最後には納得できるものです。周囲の助言をうまく取り入れながら最後には必ず自分で決定する、そしてその決定にできる限り妥協が少ない決断ができるようとことん悩みたいです。

-ありがとうございました。
2020年1月当時の学年となっております。
影
  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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