旭化成株式会社 研究・開発本部 研究開発センター勤務
高校の化学の授業で、身の回りにある“なぜ?”について、原子、分子の観点から論理的に説明付けができる化学に興味を持ちました。例えば、水は分子量が小さいのに沸点が高いことや、ダイヤモンドと黒鉛はどちらも炭素から構成されているのに全く異なる物性を持つことなど、化学はこれらの現象を明確にでき、非常に面白いものだと感じました。しかし、高校で教わる内容には限度があり、原子や分子について深く理解したいと思い大学では化学を専攻しました。
大学において周りの皆は同じ学問を専攻しますが、企業では文系理系問わず様々な人と仕事をすることになります。私は今、電池に用いる新しい技術を研究・開発していますが、多様な人財がいる最先端の現場においても、私が大学で鍛えられ自信を持てるのは“新しいことを生み出す発想力”だと思います。大学では有機化学を専攻しましたが、有機化学は小さい頃に遊んだ「ブロック」に似ています。作りたいと思ったものを色とりどりのブロックで組み上げる!この感覚で自分なりに新しい化学反応を組み立てて、実験して検証するということを繰り返していました。この時に鍛えられた新しい反応を発想するという力が生き、企業での研究開発でも新しい技術を創出することができたと思います。
企業で生産する製品や研究開発で扱う物質も、全て原子、分子から構成されています。例えば、製品の性能が悪い、思いがけない特性が発現した等のマクロ(巨視的)な現象を、原子・分子レベルのミクロ(微視的)な現象から論理的に考えることで、メカニズムの解明に大きく役立つことがあります。
世の中には日々新しい製品が誕生し、進化していますが、このサイクルはそれら製品を構成する材料の進歩なくしてありません。化学は、物質を反応させて新しい性質を持った物質を生み出すことができます。私たちはこの化学の力を借り、新しい材料を開発することで技術革新の根本に携わることができます。これこそが化学の醍醐味だと思います。
今研究開発している物を製品として世の中に送り出し、将来自分の子どもに、「あれはお父さんが発明したんだよ」と自慢することです。