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無機化学研究室

柔軟に構造が変化する分子性多孔性材料の開発 ― シロキサン錯体がつくる新しいガス吸着材料 ―

 ある特定の気体を選択的に取り込んだり分離したりできる「多孔性材料」は、二酸化炭素の回収や水素の貯蔵など、エネルギー・環境問題の解決に貢献する材料として注目されています。2025年には、金属イオンと有機分子からなる多孔性結晶材料「金属有機構造体(MOF)」の研究がノーベル化学賞を受賞し、この分野の重要性がさらに広く認識されるようになりました。MOFは内部にナノメートルサイズ(1 mの10億分の1程度)の空孔を持ち、多様な分子や気体を取り込むことができる次世代の機能性材料として期待されています。
 本研究では、結合角を柔軟に変えることができるケイ素―酸素結合(Si-O-Si、シロキサン結合)に着目し、これをタングステン錯体に連結することで、メタン(CH4)や酸素(O2)に対して高い吸着能を示す柔軟な分子構造体の合成に成功しました。この分子は結晶中互いに集まり、内部に一次元の細い通路(1次元チャネル)を形成していることが単結晶X線構造解析により明らかになりました。このチャネルには、当初溶媒分子が取り込まれていますが、溶媒分子が抜けたり、再び取り込まれたりすると、結晶構造が可逆的に変化することが粉末X線回折測定により確認されました。また、溶媒を除いた状態の結晶構造を電子回折法(micro-ED法)で調べたところ、結晶軸の長さが最大で約14%も縮むことが分かりました。さらにガス吸着測定の結果、この分子構造体は1モルあたりメタン5分子、酸素4分子を取り込み、減圧下ではそれらを放出する「ゲートオープニング」と呼ばれる特性を示しました。この現象は、構造が柔軟に変形できることに由来すると考えられます。本研究は、シロキサン錯体を基盤とした分子設計が、柔軟な多孔性材料を創出するうえで有効な新しい指針となることを示しており、将来的にガス分離や分子認識など多様な機能材料への応用が期待されます。

柔軟に構造が変化する分子性多孔性材料の開発 ― シロキサン錯体がつくる新しいガス吸着材料 ―

(論文情報)

  1. Ryo Nakamura, Koichi Nagata, Takahiro Kawatsu, Kazuhiro Matsumoto,* Yumiko Nakajima, Takuji Ikeda, Shinya Takaishi, Wataru Kosaka, Hitoshi Miyasaka and Hisako Hashimoto * Inorg. Chem. Front., 2025, 12, 7628–7636.
    DOI: 10.1039/d5qi01162k
    https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2025/qi/d5qi01162k

(掲載日:2026年3月10日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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