我々は、植物の耐塩性や低温耐性に関与する遺伝子の発現を活性化する新たな化学シグナルを同定しました。
植物は、寒さや害虫といった様々な環境ストレスに対して、自らの体を守る仕組みを持っています。その中心的な役割を果たすのが「ジャスモン酸類」と呼ばれる植物ホルモンです。ジャスモン酸類は、病害虫への防御反応や傷害応答などに関与する代表的な植物ホルモンとして知られており、その生合成経路や受容体を中心に多くの研究がなされてきました。
我々は、「ジャスモン酸類」が作られる過程で生じる中間物質が、これまで知られていなかった独自の生理機能を持つことを明らかにしました。これは、「植物ホルモンが生体内で作られる途中の分子が、ホルモン本体とは別の重要な役割を担っている」という、従来の常識を覆す発見です。本成果は、植物のストレス応答制御メカニズムの理解を大きく進展させるものであり、将来的には環境ストレスに強い作物の開発など、持続可能な農業技術への応用が期待されます。
(論文情報)
(掲載日:2025年6月9日)