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有機化学第二研究室

有機半導体分子の固体配列制御:アルキル基をどこに付けるべきか?

 有機半導体は軽くて柔らかい次世代の半導体材料として注目を集めています。有機半導体の電荷輸送や光吸収・発光といった機能は、π共役構造(単結合と二重結合の繰り返し構造)を有する部分(図中の灰色部)が担っていますが、同じπ共役構造であっても、固体中でそれらがどのように配列するかによって機能が大きく変化することが知られています。そのため、固体中での分子配列の制御が重要となりますが、容易ではありません。本研究では、分子配列制御に向けた新たな知見を得ることを目的として、最近私たちが報告した近赤外光を吸収可能なπ共役構造に対して、末端部(青色)また中央部(赤色)にアルキル基を持つ新たな分子を系統的に合成し、それらの分子配列と機能の関係について調査しました。面白いことに、溶液中ではアルキル基の位置によらず同様の吸収波長を示した一方、アルキル基を分子のどの位置に付けるかによって、固体にした際の吸収波長が大きく異なりました。すなわち、アルキル基を分子の端に付けると短波長側にシフトし、中心に付けると長波長側にシフトしました。固体中の分子配列を調べたところ、アルキル基を端につけた分子はπ共役構造が横並びを形成しやすい一方で、中心につけた分子は長軸方向にずれて重なりやすく、このような固体中の分子の並び方の違いにより、光の吸収の仕方が変わることが分かりました。さらに、中心にアルキル基を付けると、π共役構造が近接しにくくなり、有機溶媒への溶解性が向上することも見出しました。このことは、半導体材料をインク化し、印刷により成膜する際に重要な性質です。本研究成果は分子設計の工夫により、固体分子配列を制御できることを示す重要な結果です。

有機半導体分子の固体配列制御:アルキル基をどこに付けるべきか?

(論文情報)

  1. Kohsuke Kawabata, Kiyohito Mashimo, Kazuo Takimiya
    Chemistry of Materials 2024, 36, 11920–11933.
    DOI: 10.1021/acs.chemmater.4c02436
    https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.chemmater.4c02436

(掲載日:2025年1月9日)

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  • 東北大学
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  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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