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Research Results

無機化学研究室

水素分子やベンゼンを活性化するクロム―ケイ素三重結合錯体

 次世代のエネルギーとしても注目される水素分子や芳香族化合物の基本分子であるベンゼンは,化学産業における重要な原材料です。これらの分子は,それぞれ水素―水素結合や炭素―水素結合といった安定な化学結合を有しており,これらを「活性化する」(結合を弱めたり切断したりする)ことにより,新たな有用分子への変換が可能になります。従って,このような安定な化学結合を活性化できる反応は,化学合成の基盤となる重要な素反応と言えます。それを実現する化合物として,様々な遷移金属錯体やルイス酸などが開発されていますが,高価な貴金属や試薬を必要とすることが多くあります。
 当研究室では,複数元素による協働的な作用に着目し,高価な貴金属(白金やロジウム,イリジウム等)を使わなくてもこのような安定な化学結合を「活性化できる」遷移金属錯体を開発することを目指して研究しています。最近,自然界に多く存在するケイ素と比較的安価なクロムとを原料として,これらの間に三重結合を有する錯体を合成しました。そして,この錯体が光を照射する条件下,水素分子やベンゼンの炭素―水素結合を室温で容易に活性化できることを見出しました。これらの実験結果は,将来的に水素分子やベンゼンを有用な分子に変換する新しい方法論の開発に繋がると期待しています。

水素分子やベンゼンを活性化するクロム―ケイ素三重結合錯体

(論文情報)

  1. Masahiro Matsuoka, Koichi Nagata, Ryoma Ohno, Tsukasa Matsuo, Hiromi Tobita, Hisako Hashimoto
    Chem. Eur. J. 2024, 30, e202303765
    DOI: 10.1002/chem.202303765
    https://chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/chem.202303765

(掲載日:2024年10月18日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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