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生物化学研究室

細胞内アクチン骨格の制御因子PLEKHG4BのCa2+依存的な細胞内局在と細胞間接着形成の制御機構

 私たちの体の器官(食道、肺、腎臓、肝臓、分泌腺など)は、上皮細胞と呼ばれる細胞が細胞集団の層構造を作り、それが管や袋となった構造で形成されている。その秩序ある細胞の層構造を形成するために、細胞同士が接着した後、接着部位の細胞内に細胞骨格であるアクチン骨格を裏打ちするように連結させて適切な細胞間接着構造を形成している(図1A)。そして、接着構造を正常に維持するために、細胞は接着する隣の細胞の状態を感知して、アクチン骨格の構造を常に造り変えて状況の変化に対応している。
 私たちは、これまでに細胞内のアクチン骨格の再構築を制御する低分子量G蛋白質RhoファミリーであるCdc42を活性化する因子のPLEKHG4Bについて解析し、これが上皮細胞の細胞間接着の形成過程に必要であることを発見した。今回、細胞間接着形成におけるPLEKHG4Bの分子機構の解明を目的に研究を行った。PLEKHG4Bは、Ca2+を結合し、細胞内で細胞膜に結合しているAnnexin-A2 (ANXA2)蛋白質と細胞内で相互作用していることをこれまで見出していたため、細胞内のCa2+とANXA2のPLEKHG4Bに対する働きを解析した。その結果、イオノマイシンによって細胞内のCa2+濃度を上昇させるとPLEKHG4Bは、ANXA2依存的に細胞間接着部位に局在を変化させることが明らかになった(図1B-D)。上皮細胞同士が結合する細胞間接着部位は、細胞が発する機械的な力が負荷される支点となる部位の一つである。そのため、機械刺激による細胞外からCa2+の流入がPLEKHG4Bの局在変化に関与するかどうかをTRPC1やPiezo1といった機械刺激依存性カチオンチャネルの特異的な阻害剤を用いて検討した結果、PLEKHG4Bの細胞間接着部位への集積が顕著に抑制されることが明らかになった(図1)。
 これらの結果から、PLEKHG4Bは、細胞間接着部位に負荷される張力負荷に応答して局在し、力学的環境に適応するようにアクチン骨格を再構築して細胞間接着構造の形成に寄与していることが示唆された。このPLEKHG4Bを介した細胞間接着形成の制御機構は、上皮組織が力学的に適切な形態を形成する上で重要な役割を持つことが推測される(図2)。

細胞内アクチン骨格の制御因子PLEKHG4BのCa2+依存的な細胞内局在と細胞間接着形成の制御機構

(論文情報)

  1. Ninomiya K., Ohta K., Kawasaki U., Chiba S., Inoue T., Kuranaga E., Ohashi K., Mizuno K.
    Calcium influx promotes PLEKHG4B localization to cell-cell junctions and regulates the integrity of junctional actin filaments.
    Molecular Biology of the Cell 2024, 35, ar24.
    DOI: 10.1091/mbc.E23-05-0154

(掲載日:2023年12月11日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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