半導体光触媒を用いた光触媒水分解は、太陽エネルギーから持続可能な水素を生成することで、化石燃料への依存から脱却する有望な方法と考えられている。光触媒水分解の効率を向上させる戦略として、特に水素発生反応(HER)を促進するために、半導体光触媒表面への助触媒の担持が頻繁に使用されている。HER助触媒としては、白金や酸化ルテニウムのような貴金属が一般的に用いられてきた。
本研究では、有機金属構造体(MOF)の一種であるNiBHTが、非貴金属HER助触媒として機能することを実証した。代表的な水分解光触媒であるアルミニウムドープチタン酸ストロンチウム(SrTiO3:Al)と NiBHT を組み合わせることで、光照射により水の完全分解(H2 と O2 が化学量論比2:1で発生)が達成された。NiBHTは、生成したH2とO2からの水の逆生成反応およびO2の還元を促進することなく、選択的に水を分解することができ、HER助触媒としてふさわしい反応選択性を有することが分かった。光触媒系NiBHT/CoOx/SrTiO3:A(CoOxは酸素発生反応(OER)助触媒としての酸化コバルト)は特に安定した光触媒作用を示し、波長350nmにおける水分解効率は6.5%に達した。
(論文情報)
(掲載日:2023年7月5日)