タンパク質は、ペプチド結合で繋がった主鎖と多様な側鎖から構成されており、自然界で非常に緻密な機能を担っています。タンパク質の部品となるアミノ酸の多くはそれぞれ1個の側鎖を有しています。私たちはタンパク質およびその二次構造の一つであるαヘリックスにヒントを得て、多様な側鎖を有する人工の分子を開発し連結することにより大規模な分子を構築する研究を行っています。具体的には、主軸とほぼ直交する方向の側鎖を持つブロックを積み上げて柱状(軸状)の構造とするためのユニットとして擬T字型構造を持つベンゾ[b]チオフェンに注目し、ジハロベンゾチオフェン類Aを合成しました。今回は、Aを出発として数段階の反応で異なるハロゲン原子を持つビベンゾチオフェン類(例えば化合物B)を合成しました。それらは擬T字型構造を組み合わせた二段型の分子足場と見なすことができます。そこで、これら足場を利用して幾つかの経路で、置換基を導入していきました。図の化合物B→Dの例においてケイ素置換基は保護基の役割を持っており、除去したあと別の置換基を導入することができると考えられます。図には化合物Bの結晶中での構造、ならびに化合物Dの分子模型も示しています。現在、さらに積み重ねた構造の化合物の合成とその基本的性質について検討しています。
(論文情報)
(掲載日:2022年9月7日)