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有機化学第二研究室

有機半導体の結晶構造制御による超高キャリア移動度の実現

 有機半導体の固体(結晶)状態におけるキャリア移動度は、個々の分子の性質(分子物性)と結晶中での分子配列(結晶構造)に大きく依存します。量子化学計算により分子物性を予測し、最先端有機合成を用いることで多様な有機半導体分子を開発することが可能となった一方で、結晶構造を予測し制御することは現状では困難です。このため、高いキャリア移動度の実現ために、有機半導体の結晶構造を自在に制御することは重要であり、有機半導体分野における最も挑戦的な課題の一つとなっています。
 この課題に対し、私たちは、単純な構造の置換基であるメチルチオ基(-SCH3)を分子の特定の位置に選択的に導入することが結晶構造の制御に有用であることを見出し、新たにこの手法をペリ縮合多環芳香族水素であるピレンに適用した化合物(メチルチオピレン、MT-pyrene)に着目し、その結晶構造と半導体特性を調査しました。その結果、MT-pyreneが新しいタイプの二次元π積層構造を形成するだけでなく、電界効果トランジスタ素子により評価したキャリア移動度は、30 cm2 / Vsを超える非常に高い値となることを見出しました。さらに、MT-pyreneの電界効果トランジスタは数ボルトの低電圧で駆動できること、キャリア移動度の温度依存性からバンド伝導であることなども明らかとなり、MT-pyreneが非常に優れた有機半導体であることを確認しました。このことから、結晶構造制御による有機半導体の高キャリア移動度化が可能であり、新たな高性能材料開発のために有効な手法となることを明らかにしました。

有機半導体の結晶構造制御による超高キャリア移動度の実現

(論文情報)

  1. “Manipulation” of crystal structure by methylthiolation enabling ultrahigh mobility in a pyrene-based molecular semiconductor, K. Takimiya, Kirill Bulgarevich, M. Abbas, S. Horiuchi, T. Ogaki, K. Kawabata, A. Ablat, Adv. Mater., 2021, 33, 2102914. https://doi.org/10.1002/adma.202102914

(掲載日:2022年9月7日)

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  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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