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反応有機化学研究室

環骨格を開いて閉じる~フッ素置換ピペリジンの新たな合成~

 ピペリジンは、多くの生物活性天然物や合成医薬品の基本骨格に含まれる代表的な環状アミンです。その有用性から、ピペリジンの合成法の開発研究は古くから盛んに行われ、これまでに様々な合成法が開発されてきました。しかしながら、環骨格の望みの位置に望みの置換基を選択的に導入したピペリジンの合成は今なお難しく、新たな合成戦略に基づく合成法の開発が求められています。とりわけ、温和な反応条件下で、入手容易な出発物質からこれまで合成できなかったピペリジンを簡便に合成することができれば、非常に有用な合成法となります。このような背景のもと、今回我々は、容易に合成することが可能なピロリジン誘導体(五員環の環状アミン)を出発物質として、(1)五員環骨格を開く、(2)炭素鎖上にフッ素原子を導入する、(3)環を閉じて六員環骨格を構築する、という三段階の反応からなる独自の環拡大の合成戦略に基づくフッ素置換ピペリジンの合成法を開発しました。この合成法を利用すれば、従来の合成法では合成することが難しい3位にフッ素原子が導入されたピペリジン誘導体を簡便に合成することができます。また、この「環骨格を開いて閉じる」という環拡大の合成戦略は、合成することがさらに難しい七員環の環状アミンであるアゼパンの合成などにも応用できます。フッ素が導入された有機化合物は、医農薬品の開発の分野などにおいて近年大きな注目を集めています。今回開発した新たな合成法が、将来的にそれらの分野で応用されることを期待しています。

図.環骨格を開いて閉じる~フッ素置換ピペリジンの新たな合成~

(論文情報)

  1. A. Kondoh, R. Ojima, M. Terada, Org. Lett. 2021, 23, 7894-7899.
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.1c02907

(掲載日:2022年3月24日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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