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Research Results

学際基盤化学研究室

アルキンの多様な反応性を利用した、2-位置換4,7-ジハロベンゾ[b]チオフェン型ビルディングブロックの合成

 炭素-炭素三重結合を持つ化合物であるアルキン類は、酸や塩基の作用で活性化されて種々の反応に関わるため、有機合成において有用な化合物群です。三重結合の一方の炭素原子が水素原子と結合している場合(末端アルキン類)と、ハロゲン原子に結合している場合(ハロアルキン類)とでは反応性等が大きく異なり、これらは極性転換(Umpolung)の関係にある例として知られています。末端アルキン類とハロアルキン類の相互変換は、さほど困難ではないため、ビルディングブロックの構築過程にアルキン部分を組み込んでおけば、多様な反応 ― 例えば求核置換反応・求電子置換反応、クロスカップリング反応など ― による構造修飾が期待できます。
 私達は平面5員環と6員環が縮環した形を利用して縦横方向に置換基を導入する、ベンゾ[b]チオフェン型ビルディングブロックの合成と反応について研究しており、o-(スルファニル)ベンズアルデヒド類を原料として末端アルキンおよびベンゾ[b]チオフェンを同時に合成する反応について報告しています(Ref. 1)。今回は同種の原料アルデヒドを穏やかな条件で末端アルキンおよびハロアルキンへと誘導し、それらの多様な反応によってアルキン部を修飾した後、先に私達が報告したシリカゲルを用いる環化反応等により2-位に置換基を有するベンゾ[b]チオフェン類に変換しました。また、本研究で合成した2,4,7-トリブロモベンゾ[b]チオフェンの反応性についても検討し、臭素-リチウム交換反応およびクロスカップリング反応において 2-位での反応が優先することを確認しました。これらの結果は、さらに複雑なビルディングブロック構築に役立つと期待されます。

(論文情報)
K. Toyota, S. Mikami, H. Tanaka, S. Yoshida, K. Iwai, K. Takahashi, H. Kishi, Y. Kikuchi, K. Saito, H. Yamaguchi, H. Mutoh
Heterocycles, 2020, 100(11), 1763.
DOI: 10.3987/COM-20-14302
https://www.heterocycles.jp/newlibrary/downloads/PDF/26923/100/11

(Ref. 1)
K. Toyota, H. Mutoh, H. Kishi, S. Mikami, H. Tanaka, S. Yoshida, D. Naganuma
Heterocycles, 2019, 98(10), 1355.
DOI: 10.3987/COM-19-14132
https://www.heterocycles.jp/newlibrary/downloads/PDF/26430/98/10

(掲載日:2021年3月16日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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