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Research Results

反応有機化学研究室

触媒的転位反応を鍵とするメタ置換アニリンの効率的合成法

アニリン化合物は医薬品や有機材料などに幅広く利用されており、機能をコントロールする原子団(置換基)が適切な位置に修飾されたアニリン誘導体の効率的合成法の開発は重要です。特にアニリンへの置換基の導入法として最も利用されている反応(求電子置換反応)ではアニリンのオルト位またはパラ位に選択的に修飾されることから、メタ位への選択的導入手法の開発は未だに挑戦的課題です(図1)。近年遷移金属錯体を触媒として用いることによりメタ位の炭素-水素結合を直接的に修飾するC-H活性化法が注目を集めていますが、この最新の手法をもってしても2つのメタ位が同時に修飾されたり、パラ位に置換基がある場合に効率性が低下するといった問題点があり、新たな方法論の開発が求められています(図2)。この問題点に対し、我々は転位反応を用いた新たなメタ位置換型アニリンの効率的合成法を開発しました。すなわち、我々は窒素上にメトキシ基(OCH3)とオルト位に電子供与基 (EDG) をもつアニリンを設計し、炭素求核剤 (R-H) の存在下でカチオン性銅触媒を作用させたところ、メタ置換アニリンが効率的に得られることを見出しました(図3)。鍵となる転位反応により求核剤の付加を受ける反応性中間体(オルトキノールイミン)が一度だけ生じることから、メタ位が2つとも修飾されてしまうことがありません。またパラ位には幅広い置換基が適応可能であり、アニリンのベンゼン環上に複数の置換基を選択的に配置することができることが特徴的です。出発物質も容易に調製できることから、多置換アニリンの効率的かつユニークな合成法といえます。本反応を用いて合成された生成物が医薬品や有機材料などの開発研究に将来応用されることを期待しています。

(論文情報)
“Synthesis of meta-Substituted Anilines via Copper-Catalyzed [1,3]-Methoxy Rearrangement”
I. Nakamura, H. Tashiro, Y. Ishida, M. Terada, Org. Lett. Article ASAP.
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.0c01009

(掲載日:2020年5月7日)

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