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Research Results

学際基盤化学研究室

縦横型三官能性ビルディングブロック分子

 最近では、さほど大きな建物でなくてもまず足場を組んで工事しているのを見かけることが多くなりました。足場があるといろいろ好都合なのでしょう。通常これらの足場は、縦・横・斜め方向の要素を組み合わせながら連結していきます。とても小さい分子の世界にも、そのような足場があれば様々な用途に役立つのではないでしょうか ― これが「分子足場」あるいは「ビルディングブロック」の考え方になります。実は生体内の蛋白質も側鎖の付いたビルディングブロックであるアミノ酸を設計通りの順番で多数繋ぎ合わせたものです。それでは人工のビルディングブロックを使って大きな分子を組み上げていくことはできないものでしょうか?
 私達は平面5員環と6員環を組み合わせて分子を縦・横に繋ぐためのビルディングブロックとして、ベンゾ[b]チオフェンという化合物に注目しました。この化合物自体の電子の偏り(極性)は大きくないものであり、側鎖の働きを陰で支える足場骨格を構成するのに適していると考えられます。種々検討した結果、ヘキサンやトルエンのような極性の低い溶媒中で前駆体となるアルキンをクロマトグラフィー用のシリカゲルと一緒に加熱するだけという非常に簡単な方法で、ハロゲン原子を3個持つ2,4,7-トリハロベンゾ[b]チオフェン分子を合成できることを発見しました。今回合成した分子は縦・横方向にヨウ素・臭素・塩素を1個ずつ結合しており、6通りの組み合わせ全ての化合物を合成しました。また縦方向に2個の異なるハロゲン原子を持つ4,7-ジハロベンゾ[b]チオフェン分子6種も合成しました。これらのハロゲン原子はクロスカップリング反応における反応性がそれぞれ異なるため、他の様々な置換基と望みの方向で置き換えることができると期待されます。

図:縦横型三官能性ビルディングブロック分子

(論文情報)著者・雑誌名・掲載ページ・DOI・論文URL
S. Mikami, H. Tanaka, H. Kishi, S. Yoshida, K. Toyota
Heterocycles, 2018, 96(9) 1529.

DOI: 10.3987/COM-18-13937 https://www.heterocycles.jp/newlibrary/downloads/PDFwithLinks/25997/96/9

(掲載日:2018年10月15日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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