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反応有機化学研究室

“最強”の触媒による新たな有機合成~不斉有機超強塩基触媒を用いた分子変換反応の設計・開発~

 新たな医薬品や機能性有機材料の開発のためには、元となる“欲しい化合物”を“選択的に”に合成する新たな有機合成技術の開発が必要不可欠です。特にキラルな化合物(鏡像と重ね合わせることができない分子)は、エナンチオマー(鏡像異性体)間で生体内での作用の仕方が異なることが多いことから、片方のエナンチオマーのみを選択的に合成すること(不斉合成)は非常に重要です。私たちの研究室では、より高効率で高選択的な不斉合成を可能にすべく、「高い性能を持った不斉有機分子触媒(低分子有機化合物からなる触媒)の開発」と「高度な分子変換反応の開発」を目指し、研究を行っています。
 今回私たちは、独自に開発した強力な塩基性をもつ不斉有機分子触媒(不斉有機超強塩基触媒)を用い、新たな反応設計に基づく五員複素環化合物の不斉合成法の開発を行いました。具体的には、入手容易なエポキシドとイミンの触媒的不斉[3+2]環化付加反応の開発に成功しました。この反応は有機合成におけるビルディングブロックとして有用な光学活性オキサゾリジンを高い収率、高いエナンチオ選択性で与えます。また、この反応では一般に構築が難しいとされる不斉四置換炭素の構築が可能となっています。今回の反応開発の成功の鍵は、「適切な反応設計」と「触媒の塩基性」です。この反応は複数の素反応が連続的に進行するタンデム反応であり、独自の五員複素環構築の方法論に基づく反応設計によるものです。その一方で、この反応は私たちが開発した触媒の類まれな強い塩基性(おそらくこれまでに報告されている不斉有機塩基触媒の中で最も強い塩基性)により実現できました。今回開発に成功した反応のように、不斉有機超強塩基触媒を用いるからこそ実現できる反応はたくさんあります。「新たな反応設計」と「強力な塩基性」によるさらなる高度な分子変換反応の開発を目指して、今後研究を展開していきます。

図:“最強”の触媒による新たな有機合成~不斉有機超強塩基触媒を用いた分子変換反応の設計・開発~

(論文情報)著者・雑誌名・掲載ページ・DOI・論文URL
Enantioselective Formal [3+2] Cycloaddition of Epoxides with Imines under Brønsted Base Catalysis: Synthesis of 1,3‐Oxazolidines with Quaternary Stereogenic Center A. Kondoh, S. Akahira, M. Oishi, M. Terada,
Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 6299-6303. DOI: 10.1002/anie.201802468

(掲載日:2018年8月9日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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