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無機固体物質化学研究室

ビスマス原子シートの超伝導発見 ~ 層状ビスマス酸化物の新超伝導体の合成

 金属は電気をよく流しますが、有限の抵抗をもち、常伝導と呼ばれる状態にあります。ところが、ある種の金属を非常に低温まで冷やすと抵抗がゼロになります。これは超伝導とよばれる状態で、オームの法則から電流を流すために必要な電圧がゼロなので、電力が不要の送電線、リニアモーターカーに用いる磁気浮上技術、電力貯蔵といった産業応用やエネルギー問題にも役立つ現象です。したがって、室温超伝導体は夢の材料ですが、この四半世紀の間、常圧での超伝導の発現温度の最高値はマイナス120度程度から更新されていません。新しい超伝導体の探索を続けるのが、室温超伝導体を見つける唯一の鍵です。

 最近、ビスマス化合物は熱で発電する熱電材料などエネルギー変換・省エネルギー材料としてさかんに研究されていますが、超伝導を示すビスマス化合物はそれほどありません。最近になって、高温超伝導を示す鉄系化合物と同じ結晶構造をもつビスマス層状化合物Y2O2Biの合成が報告されましたが、超伝導体ではありませんでした。このビスマス層状化合物は、単原子の厚さのビスマス正方格子とブロック層の積層構造になっています。しかしながら、Y2O2Biの酸素をより過剰になる組成で合成したところ、ゼロ抵抗と完全反磁性を示す超伝導の観測に成功しました。酸素を過剰に導入した試料では、ビスマス単原子シートの間の間隔(c軸の格子定数に相当)がわずかに拡がっていることがわかりました。酸素を導入することで、酸素がビスマス単原子シートとYOブロック層の間のわずかな隙間に入り込んでc軸が伸びることで、超伝導が発生すると考えられます。非常に薄いビスマス単原子シートが超伝導状態になっているため、べレジンスキー-コステリッツ-サウレス転移という2次元物質に特有の相転移を示します(コステリッツとサウレスは2016年にノーベル物理学賞を受賞しています)。層状化合物の結晶構造の隙間に原子を挿入して格子定数を調節し超伝導を誘起する、という手法は、これまでの超伝導体化のための化学手法と異なり、この手法によりビスマス化合物以外にも新たな超伝導体が見つかる可能性があります。

ビスマス原子シートの超伝導発見 ~ 層状ビスマス酸化物の新超伝導体の合成

図 (a) Y2O2Biの結晶構造。結晶の隙間に過剰な酸素が配位していると考えられる。(b) 各印加磁場における抵抗率の温度依存性。印加磁場が弱い場合はゼロ抵抗状態にあるが、印加磁場が増えるにつれ、磁場で超伝導状態が壊され、常伝導状態に戻る。(c) 超伝導転移温度と格子定数の関係。過剰な酸素が少ないと格子定数が小さく常伝導状態のままだが、過剰な酸素が多く格子定数が大きくなると、超伝導状態が発現する。

(論文情報)著者・雑誌名・掲載ページ・DOI・論文URL
Ryosuke Sei, Suguru Kitani, Tomoteru Fukumura, Hitoshi Kawaji, Tetsuya Hasegawa
“Two Dimensional Superconductivity Emerged at Monatomic Bi2− Square Net in Layered Y2O2Bi via Oxygen Incorporation”
J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 11085−11088
DOI: 10.1021/jacs.6b05275
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.6b05275

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