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Research Results

計算分子科学研究室

水‐油界面の分子の動きを捉える

 水と油の界面は、物質の抽出や分離、センサーへの応用など様々な現象に関わっています。しかし液体の界面での分子の動きを実際に捉えるのは非常に難しい問題でした。私たちは計算化学によって界面での分子を見てきたように追跡し、その振る舞いを明らかにしています。

 その一つの例を以下に示します。水から油へイオンが移動する際、イオンが油に入った直後にはしばらくの間水を引き連れて動き、独特の柱状の構造を作るといわれています。(まだ実験で観測した人はいませんが、計算化学からはほぼ明らかとされています。) 私たちは界面で現れる独特の揺らきの様子を詳しく調べて、イオンが界面を通過する速さを際立って遅くしていることを証明しました。これまでにも、イオンが水‐油界面を通過する速さを測定してみると、普通に考えられるよりも何故か桁違いに遅くなることが知られていましたが、その理由が分子レベルの動きによって明らかとなったのです。

 計算化学は原子・分子の精密な動きを解明するうえで、非常に強力な手法です。私たちは実験での観測とも共同で、液体の界面での分子の詳細を次々と明らかにしています。

イオンが水‐油界面を通過する際の自由エネルギー面

図 イオンが水‐油界面を通過する際の自由エネルギー面。Cl-イオンが油中に入った直後に水を引き連れている様子(左パネル)と切れた様子(右パネル)。この間の構造変化に活性化障壁があることが分かり、それが移動速度を遅くしている。

著者・雑誌名・掲載ページ・DOI
"Microscopic Barrier Mechanism of Ion Transport through Liquid-Liquid Interface"
Nobuaki Kikkawa, Lingjian Wang, and Akihiro Morita, J. Am. Chem. Soc., 2015, 137, 8022–8025, DOI: 10.1021/jacs.5b04375
("Spotlights on Recent JACS Publications" J. Am. Chem. Soc., 2015, 137, 8311–8312, DOI: 10.1021/jacs.5b06634 )

(掲載日:2017年2月16日)

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  • 東北大学
  • 東北大学大学院理学研究科・理学部
  • 東北大学巨大分子解析研究センター
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